みるく工房飛鳥通信 西井牧場のasukaの独り言
牛歩の遍歴 四十ニ歩目
牛舎の搾乳機の軽いコンプレッサーの音に誘われ外に出て見ると初春の心地よい日差しが俺をさす。見る物が全て珍しく昨晩に来たので牛舎の建物なんか全く分からなかったが今見るとスイス風と言うかヨーロッパ調と言うか「こんなやったんか」と感心さされた。かなり古い木造で中二階になって、なんと表現したら良いか口では言いあらわすのがむつかしい。中に入ってみると最初に驚いたのはスイスの牛ってこんなんやって事かな・・・
体がブラウンで足から下腹にかけて淡いブラウン、顔の鼻と目元も同じでかなり小形の牛であった、搾っている牛は後で聞いた話だけど肉牛兼用らしくホルスタインよりもお乳の量が数段少ないようだ。まだ搾乳の機械もバケツ型のミルカーで日本の技術から見て遥かにレベルが低いみたいだ。
Kさんが俺を見るなり「こんだけの牛や、まぁ頑張ってくれ」と苦笑いをした。頭数は確か20頭程で対頭式(二列で頭が向き合っている)で鎖に繋がれている。
搾られた牛乳は輸送缶(円筒状になった亜鉛引きの入れ物)に入れられ冷水で冷やされている。見るとただ2本しかなかった、しかしこの位の量でどのように生計を立てているのかその時は分からなかった。
牛舎を一通りKさんが説明してくれた。牛舎に入って右側の部屋には中くらいの牛から大きな丸々とした牛まで15頭位いたかな。搾乳の牛とは品種が違いブラウンと白のブチの牛がいた「ここは肉にする牛を育てているところや」「この牛を近くの屠場に持って行って肉にしてもらい冷凍するんや、毎日の食事の肉やで」とKさんは言う。
牛舎の仕事が一段落して、居間と言うかキッチンと言うか分からないがとりあえず朝食に入って行った、そこにはシェフやムッティー(お母さんと言う意味、いつもそのように呼んでいたので名前を忘れてしまった)がいた「サーリー」とKさんは言う「なんやそれはフランス語みたいやな」と俺がいうと「ここは色んな言葉が入っているから、いつも言っているので通じるのや」とKさんが答える、ムッティーは「モルゲン」と・・シェフは早口で何を言ったのか分からない、こうして第一日目の朝食が始まろうとしていた。