みるく工房飛鳥通信 西井牧場のasukaの独り言
牛歩の遍歴 三十九歩目
日本を飛び立ちわずか数時間で韓国に着く。ここでどうやら飛行機を乗り換えるようだ。隣に座っているスイス人の方が何かを話し掛けてきた片言の英語を聞き取り何とか聞こうと思ったのだが、さすがにさっぱり分からなかったのが記憶にある。乗り換えに3時間の待ち、乗客のみなさんが向かう方向へ流れるように歩き最終にたどりついたのは外も見えず店も何も無いフロアーで椅子だけが並べてある待合所だった、こんな所で3時間も待てないと思っても行く所が無いので待つしかないかと開き直ったものだった。
話する相手も無く寝るしかないかと目を閉じた。しかし最初からこのようでは先が思いやられるなとがっくりとしたものだった。
飛行機を乗り換えてしばらくするともう次へ降りなければならず、運行経路をみるともう地名は忘れたが東南アジアから中近東へてヨーロッパへ入る南回り、何だか気が遠くなりそうなまたはるばる行くスイスとはこんなにも遠く感じた事はない。
ただ、その時の記憶では確かサウジアラビアだったかターバンを巻いた色黒で目がギョロッとした男性の団体が乗り込んで来たのだけは印象的だった。アラジンの魔法使いみたいで面白いと言うよりも外の世界が初めてだけに恐怖感が先立ってしまい、マジで顔を見ることができなかった。
どうのこうのしているうちに時間は早いもので、いよいよスイスのチューリッヒ空港に到着したのである。とりあえず長旅なので腰が痛くて足はむくんでしまい歩いても宙に浮いている感じで、真っ直ぐ歩いているようでもフラフラしていたのである。空港には先輩のKさんが迎えに来ているはずなのだが、言うのを忘れていたが俺が農家実習に行く所は母校の農大の卒業生を毎年1名だけを受けてくれる農家なので先輩が先に行っているのである。その先輩Kさんの代わりに俺が入る予定できたのだ。到着ロビーから荷物の受け渡し場所まで来たのだけれどもなかなか荷物が出てこず、ふと荷物が乗り換えの時に何処かに行ってしまったのかなと不安がよこぎった。しばらくするとテープで巻かれた荷物がひとつポツンと出てきた、「あっ、俺のや」どうやらスーツケースのチャックがやぶけてテープ巻きにされているようだ。やっとのことで荷物をうけとり入国手続きでパスポートを見せてOKで外に出る事ができた。
そこにはKさんが立っていてくれた。先輩なので顔は知っていたのですぐに分かった。「なんや、あんまり遅いんで間違うたんかとおもたで」とぽつり一言、その訳の話しが終わろうともしないうちに「ほな、行くで、時間がないからなついて来や」とぶっきらぼうにKさんは言うとすぐに歩きだした。俺は腰痛とむくんだ足をひきずり後に続いた。