みるく工房飛鳥通信 西井牧場のasukaの独り言
牛歩の遍歴 三十四歩目
2時間の空の旅もいよいよ大阪伊丹空港に到着だ、機体はゆっくりと下降し始める。
あたりはもう真っ暗闇につつまれ滑走路のランプだけが直線を描いている、しかし気になるのはC子に電話を入れら無かった事だとりあえず空港に着いたら連絡するか、あのわがままなC子は怒るだろうなと思いにはせっていると機体は滑り込むように着陸した、お客がぞろぞろと歩く方向に俺もつられて歩いていくと到着ロビーに見慣れた顔がチラッと見えた、あれ、もう一度見直すとそれはC子だった、その時の俺の気持ちは言うに言い表せない感動を覚えた何故だろう、連絡もしていないのにC子が・・・
「お帰り」のC子の一言「なんでや、よう分かったな」と俺が聞くと「あんたなぁ帯広からの便なんてなんぼ無いんやで、この位に帰ってくると誰でも分かるわ」といつもながらあいその無い返事、「せやけど、電話一本もよこさへんって何考えてるんやいいかげんにしいや」の言葉に俺は事情を説明したが、なかなか理解してもらえず「まぁ、ええわ、今晩はもう遅いから明日に帰るやろ、ご馳走したるから」とC子が言う「ええんか、俺が行っても」って言いながらC子の後を追いかけていった。
その当時C子は大阪の茨木にある小さなアパートに住んでいた、中に入ると女の子らしく片付いており清潔感にあふれていた、「今夜は鍋でええやろ、ビールは冷蔵庫にあるから自分で取ってや」と準備をはじめた、下ごしらえがしてあったようで早々に鍋にありつくことができた、その夜は北海道の話やC子の生活など会話で久々に楽しい時間を過ごすことができた、この時以来C子に特別な感情、つまり一緒になれたらいいよなぁってお互い沈黙の了解済になったように思われた。
夏休みも終わり新学期に入ってまた宿舎に戻って来た、やはり話題になるのは北海道研修の話だ、当分この話で愚痴のこぼし合いになったのが記憶にある。
10月には農大祭があるのだけれど我々は農大から離れていた為にほとんど関知しなかったのが現実だった。
当月中旬より2ヶ月間、農家実習と言うのが義務付されており農家に入り込み泊り込みで農業の体験をすると言うものだ、俺はかねがね海外研修に行くと希望しておりそのミッションの関係でお世話をしてくれる酪農家へ行くことになっていた。