みるく工房飛鳥通信 西井牧場のasukaの独り言
牛歩の遍歴 三十歩目
翌日、気持ちが張っているせいか早く目覚めたが身体が動かない、昨日の仕事で筋肉痛だ、横になりながら這うようにしてやっと立ち上がる事ができたが、あらゆる筋肉が油切れのようにギシギシと音をたてているように思えたまるでロボットがドシンドシンとぎこちなく歩くさまを再現しているようだ、やっとのことで牛舎までたどり着く事ができた、酪農の仕事は相変らず朝が早いもう機械が回り搾乳をしている、身体を動かしていると何とか元の身体に戻ってきた。
今日も昨日と同じ仕事で牛を外に出して寝床の干草をフォークで反転して綺麗に掃除をしてやる、それが終わるとまた捕場へ行き干草の梱包の仕事だ。
ちょうどその昼頃、奥さんが車で走って来た、「牛が逃げて隣の畑を荒らしてる」との事、ご主人のK氏はあわてて奥さんと帰ってしまった、「お〜い、後の仕事誰がするの」って一人つぶやながらトラクターのエンジンをかけた、仕方ないゆっくりでもいいからやってみるか・・もう一人のおっちゃんに「後ろ頼むわ」と言いながら機械を始動さした「おぉ、我ながらうまく行くなぁ」って自分で感心しながら作業を進めた。
しばらくたつとK氏が戻ってきた「また、隣に弁償しゃんなん」「牛を入れる時間やと思っていたのに」と独り言の口調で話した、話によると牛が外で草を食べている時間はだいたい2時間位だそうだ、それ以上になると時間を持て余し今度は遊びに変わってしまいあちこちいたずらをするらしい、たまたま隣が野菜農家であるためそちらの方が美味そうに見えるのだろ好奇心の強い牛はそちら向いて行くそうだ。
今日は牛の脱走があったためにいくらも仕事がはかどらず牛舎へ帰って来た。
その夜、一緒に実習に来ていたTから電話があり一日休みをもらって観光をしょうと言う内容だった、「そうやな、一日位休みをもらおうか、それでNはどうしてんねん」と聞くと「あれっきりやこれから電話するとこや」と言う事で電話をとりあえず切ってご主人に了解を得ることにした、「いいよ、せっかく来ているのだからゆっくりして来たら」と暖かく言ってもらい道東観光に行くことにした。
しばらくするとまたTから「おい、Nが休み貰えないみたいやぞ」との電話だ「どうしょう」お互い沈黙が続く。