みるく工房飛鳥通信 西井牧場のasukaの独り言
牛歩の遍歴 二十四歩目
ようやく官舎での寮生活にも慣れたけれども、やはり食事の準備だけはそう簡単にはいかない「毎日、こんなインスタント物では体がもたないな、何とかしなければ」と言う声がで始めた、「おい、鶏舎へ行って卵とってこいよ」「俺に言わんでもお前行ってこいよ」とのやりとり、「そうや、鶏をばらしてカシワ(鶏肉)にしょうや」と俺が言うと「誰するんや」と視線が俺に集中した、昔、農高時代の経験が今に蘇る、「よっしゃ、明日さっそく実行しょう」
翌日、場の人にその旨を伝え廃鶏を一羽分けてもらうことにした、「おい、今日は授業を早く終わらないとできへんで」「適当に終わろうや」とこの時だけは一致団結や、ようやく夕方近く、すべてをこなして鶏舎へ行く。そこにはもう俺達の食事の材料になる鶏が首を切られ逆さに筒の中に入れられ血抜きをされていた、場の人がみるにみかねて準備をしていてくれたようだ「ようするんか」って聞かれ「できればしてほしいです」って言うと手早く毛をむしりあっというまに肉に仕上がっていく「おお、今夜は鶏肉で焼き鳥やで」おもわず口からでてしまった、みんながニヤリとした笑顔を浮かべ鶏をさばく技に見とれていた、とりあえず出来上がった肉を官舎に持って帰って、笹身はさしみに一口サイズに切り、後は醤油と砂糖で甘辛く煮込むだけのものとキャベツで野菜炒めとこれだけの今夜のメニューが出来上がった、久しく肉を食っていなかったのでいい加減な料理でも美味しく感じたものだった。
ある日の事だった「もうすぐ夏休みやで、北海道へ研修に行くか」「そうやなそんな体験もええなあ」って言う事で話はとんとん拍子に進み、場長の先生に派遣先を依頼し数日後、返事があり、十勝の北に位置する士幌町の開拓農場に決定した、日にちはとりあえず8月1日から20日までと言う事だった。
その夜、久しぶりにC子に電話を入れ「8月に北海道にいくねん」と連絡をいれた「それやったら京都まで見送りに行ったるわ」って相変わらずの無愛想な返事やけど楽しみに輪がかかったようでその日が待ち遠しくてしかたがなっかた。