みるく工房飛鳥通信 西井牧場のasukaの独り言
牛歩の遍歴 二十一歩目
「○○君!!下に女の人来てるで」それは日曜日の朝だった、恒例のスピーカーからのアナウンスが聞こえた、ふと時計を見るともう10時を過ぎていた、今日は日曜日なので朝食がない事を理由にそのまま寝込んでいたらしい、あわててベットから飛び降りて廊下の窓から中庭を見下ろすとそこにはC子が立っていてその横には50ccのスポーティなバイクがあり高校時代の顔見知りの友人と話をしていた、その友人は俺を見つけ「はよ、降りてこいや」と叫ぶ、そう言えばC子と会うのも何ヶ月振りか春休み以来だった。
外に出ると初夏の日差しがまぶしくC子の姿が太陽の光を浴びてまるで少女漫画のヒロインのように輝いて見えた、そんなC子に近寄りながら、あの頃はウブだったのか照れを隠し切れずよそよそしく「よう来たな、相変わらずよく太って、ちっとは痩せよな」ってイヤミを口走ってしまった、本音はそうじゃ無く毎日がマンネリ化してしまった今の俺に息吹を与えてくれたほどの感激があったのに、C子はそんな俺の気持ちを察したのか「ほっといてよ、これは産まれつきなんよ」っておどけて答えてくれた。
「なんや、大阪からバイクで来たんか、なんぼほど元気やねん」て、またつまらん話しになってしまった、本当の気持ちをそう言った言葉でしか表現できない自分にある意味では減滅してしまった、今日と言う日をあれだけ待ち続けたのに何故「よう来たな、会いたかった」と言えなかったのか、今までの会いたい気持ちが会えたとたんその欲望が満たされ安堵感に変わり、また次の刺激が欲しくなる、これは俺だけだろか、その後、寮の俺の部屋へ案内して今まで色んな体験などを話しに夢中になり時の過ぎるのを忘れるほどだった、気が付けばもう夕方になっていた夕暮れは長くなったといってもバイクなので早めに帰るわと言うC子を止める分けにいかずその日は今度また会おうと約束をして別れることにした。
楽しい時は瞬間に過ぎてしまう、翌日よりまた、あのだらしない生活が始まった。