みるく工房飛鳥通信 西井牧場のasukaの独り言
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今朝は、めっきりと冷え込む、初霜だ、そう言えば紅葉も一段と濃さを増して来たようだ。霜が朝日に照らされダイヤのように輝き、吐く息の白さの向こうに黄金の明日香が霞む。 |
牛歩の遍歴 十一歩目
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その初春、外はまだ寒さの残る新緑の時期、「今度の日曜日、北海道から牛、はいるで」と言う突然の知らせ。さぁ、牛が入ってくるわ、牛舎の工事も急ピッチで行われる。後、少しや、俺も春休みに入っていたので毎日、牛舎の後片付けや大工さんの手伝いに行っていた。いよいよ、その当日が来た。朝早く10トン車が到着。今になって恥ずかしい話だがその当時、俺は「ホルスタイン」と言う大きな化け物の牛を見たことが無く好奇心と不安で足がおぼつかない。車が大きい為に牛舎の前まで入らない。 |
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「しかたない、ここから引っ張っていくか」と向こうから人の声がする。「えっ、ここから牛舎まで」思わず俺は興奮のあまり声を発してしまった。後ろの戸が開かれる。見上げるとなんと予想以上に大きく感じる。一頭づつおろされる。長距離の輸送でなんだか牛が疲れている様子で元気が無い。「おぉ、これならなんとかなるぞ」と、安堵感が走る。10頭がすべて降ろされ、トラックに繋がれた。そこで座り込む牛や息づかいの荒い牛などさまざまだ。ようやく、一頭づつ順番に牛舎に向けて連れ込む。俺は引っ張るのに自信が無く、お尻を追いながらついていくだけだったが、最後に「これ、頼むわ」と、追い綱をわたされた。「えっ、どうしょう」しかたがない、もう開き直りで「おとなしくついて来いよ」と願いながら一歩一歩引っ張って行く。無事、牛舎に到着、思わず足の力が抜け、座り込んでしまった。やれ、やれ、すべて完了。牛舎に繋がれた牛達は、めいめい、これからの自分の寝床を確かめながら思い思いのしぐさでくつろいでいるようだ。これからが、牛歩への前書きみたいなものだ、今夜から、初めての乳搾りが始まる。 |